こんにちは。
くらそうねライターの豊田有希です。
富士山と生きるおばあちゃんの知恵では、山梨県巨摩郡身延町に住むおじいちゃん、おばあちゃんの暮らしの知恵を紹介しています。

第19回の3月(弥生)。
おじいちゃん、おばあちゃんの家にお昼過ぎに伺ったら、美味しそうな竹の子の煮物を見つけました!「わ!これ美味しそう」と瞬間的につまませていただくと・・・。

「それがね、いのししに先を越されちゃったのよ」と大笑いするおばあちゃん。

 <お昼の後の休憩タイム。外で休憩なんて気持ちいいですね。>

裏山の竹林に朝おばあちゃんが行って見ると、たくさんの穴と竹の子の外側の皮が地面に落ちていたそうです。
おばあちゃんの手作り竹の子のつくだ煮は去年乾燥させた竹の子を使っているそうなので、「去年のたけのこ食べてる場合じゃないわ、おじいちゃん!!と大笑いしたの」とおばあちゃん。

たけのこはまだ地面の下にあって、まだ地上には出ていないのに、いのししは、嗅覚がすぐれていて、土の中の竹の子を探り当てて、掘って食べるそうです。
裏の竹林に行ったら、穴が10個以上も!!かなり食べられていました。

<裏山の竹林。竹と竹の間隔は傘が通るくらいが良いそうです。>

<いのししが掘った後の穴。もちろん竹の子は跡形もなくいのししの胃袋の中。>

<竹の子の皮が捨て置かれています。がーん>

地上に出る前の竹の子はまだそんなに大きくないはずなのですが、それでもこの時期になると必ず掘り起こして食べてしまうそう。
網をはって竹林に入らないようにしているのですが、少しの穴から入り、穴の近くで竹の子を掘って食べた後、入ってきた穴からちゃんと出て行く習性があるそうです。(賢いですね)
いのししは、竹の子がでるときだけ、毎年やってきてこうやっていたづらをするそうなので、竹の子は「猿・いのししから守って食べるもの」
毎年知恵比べです。

ちなみに、たけのこ堀りの名人と呼ばれる人は、足の裏の感触でたけのこの場所を掘り当てるそうです。
私も試してみましたが、土の上には落ち葉が重なっていてふかふかで茶色い地面は見えませんし、足の裏の感触を研ぎ澄ませてみても、ひとつも見つけることができませんでした!!!いのししにも名人にもかないませんね。

それでも地面を探していると、いのししが食べなかった小さな小さな竹の子が落ちていました。

あれ、みんなが知ってるあのお菓子に似ている!!ということで比べてみました。

<お菓子のたけのこの里と本物のミニ竹の子です。背景には富士山が。(河口湖で撮影)>

乾燥竹の子でつくる絶品の煮物

さて、おばあちゃんのところで頂いたその竹の子の煮物がこちらです。

乾燥たけのことちくわで作った竹の子の煮物なのですが、ご飯のお供にも、おつまみにも最高のお味です。

<左が乾燥たけのこ・右が乾燥竹の子の煮物です>

まず、乾燥たけのこをつくります。
竹の子の皮をむき、あく抜きをせずに、塩茹でして、水を切って、細く切ってカラカラになるまで(写真参照)干します。
見た目はまるで”するめ”みたいです。
ストーブの上で焼いて食べれそうです。

○竹の子の煮物の作り方

  1. 乾燥竹の子をお水に入れて一晩戻す
  2. 水から茹でる。茹でたら一度茹でこぼす。
  3. 出汁を用意する(おばあちゃんは、煎茶を飲んだ後に残ったお茶殻にお湯を入れそのままおいておいたお茶殻出汁を使う。)通常のだし汁でも大丈夫。
  4. オリーブオイルで竹の子を炒め、出し汁、砂糖とお醤油をいれて煮詰めればできあがり。ちくわは、煮物用のものを使い、最後に少し煮ます。

なんでしょう、この美味しさは。
天日干しした竹の子にうまみがたくさん入っているようなそんな特別なお味です。

昔はこういった乾燥竹の子を使い、集落で誰かが亡くなると、みんなで惣菜を持ち寄ったそうです。
毎回、お葬式で手づくりのお豆腐を作ってくれる家があったり、その家々の味や得意料理があったそうです。

親戚やお友達からも「しょうこちゃん(おばあちゃんの名前)のお店」をやったらいいよ、とよく言われるそうです。
私もおばあちゃんのお惣菜を売りたいです!と思わず言ってしまったのですが・・・。

おばちゃんはあっさりと「喜んでくれる人だけにあげたいから、直売所には出したくないの。残ったりしたら嫌だし」と断られてしまいました。
おばあちゃんの工夫のつまった手作りの旬の食べ方などは、これからも伝授してもらい、こうやってみなさんにお伝えできればと思います。

昔は冬の間はみつまたで生計を支えていた

家の裏山には「みつまた」が植えてありました。
かつて、おじいちゃんが中学生の頃までは、みつまたを乾燥させて出荷していたそうです。
みつまたは何になるかというと・・・高級和紙の原料で、お札の原材料になります。
1万円にも使われているそうですよ。
お札の原材料には、耐久性とつやなど様々な要素が求められているそうです。
日本では、明治からこのみつまたが原材料の一部として使われているそうです。

おじいちゃんの住む身延町内には西嶋和紙という和紙で有名な地区があります。
そちらに出荷していたそうですよ。

みつまたの枝を折って皮をむいたら、スーッとおもしろいように皮がむけ、しかも全然ちぎれないので、長い皮が。
まるで”つた”ようなやわらかさ。
この弾力もお札作りには欠かせないのかもしれませんね。

 

<みつまたの花・下を向いて咲いています>

<皮をひっぱるとするするするっと向けていきます>

<皮はどこまでも切れない!ひっぱって遊べそうです。この皮の部分がお札の材料に>

<昔のことを教えてくれたおじいちゃん。自然と笑顔がほころびます。>

おばあちゃんの雨の日のひまつぶし

70歳を超えたおばあちゃんはすっごくお元気で若々しい。
その秘訣は、毎日1時間のウォーキング、野菜や花を育てること、毎日の手作りヨーグルト生活などいろいろな工夫があるのですが、手先を使うのもいいのよね、と刺し子を見せてくれました。

<両面違う柄を刺すのよ>

お友達と一緒に始めたそうですが、忍耐力のいるこの作業は苦手な人も多い中、おばあちゃんは何枚も作ってお友達に渡したそうです。
雨の日にいいのよね!と教えてくれました。
この刺し子キットは昔100均で売っていたそうなのですが、今はどこにも売っていないそう。
見つけたらプレゼントしたいですね。

おばあちゃんに今の時期の楽しみは?ときいたところ、「今はお花ね」と教えてくれました。
冬を越えたお花たちが咲きはじめて、家の中、玄関、お庭で順番に咲きはじめていました。

桜の枝を切って、家の中にいれたら早速咲き始めたようです。
いち早く家の中で桜のお花見をさせていただきました。

<玄関では季節の花がお出迎え。毎回変わっていますよ>

<お庭の梅も見ごろです>

編集後記

おじいちゃん、おばあちゃんの住む身延町は、今若者の中でちょっとしたブームになっています。
「ゆるキャン△」というキャンプをテーマにしたマンガに身延が出てくるそうで、マンガのファンが身延町を訪れているようなんです。
小さな駅の前には名物の「みのぶまんじゅう」が売っているのですが、このおまんじゅうを買って食べ歩きをしている若者が増えているそうです。
ちなみにこのおまんじゅうは手作りで添加物などが入っていないので、賞味期限は3日間くらいと短いのですが、とても素朴で美味しいんです。

3月末ごろからは身延山久遠寺や身延の各地では、「しだれ桜」が咲きほこります。
しだれ桜の里として有名な身延町。
ソメイヨシノとはまた違う、小さくてピンクの花びらがたくさん咲きます。
中には樹齢400年のしだれ桜もあるんですよ。

身延町の観光サイト