アスベストのレベル3・レベル2・レベル1の違いとは?撤去費用はどのくらい?
建物を解体するとき、解体費用を大きく左右するのが「アスベスト」です。
アスベストが含有された建物は解体費用がその分高くなります。
しかし、アスベストにはレベルがあり、そのレベルによっても費用は変わってくるのです。
解体を依頼するうえでは、アスベストレベルについて理解しておくことが必要です。
この記事では、アスベストレベルの違いと撤去費用の目安について分かりやすく解説します。
アスベストのレベルの違いとは?
アスベストのレベルの違いとは、飛散の危険性に合わせた作業レベルのことを言います。
レベルは、レベル1から3までの3段階に分かれ、レベル1が最も危険なレベルとなるのです。
一般的な毒性のある物のレベルは、危険性が高くなるとレベルの数値も上がるのに対し、アスベストはレベル1が最も危険なレベルとなるので注意しましょう。
そもそもアスベストとは石綿とも呼ばれる繊維状に変形した天然鉱物のことを言います。
アスベストは、かつて「奇跡の鉱物」と呼ばれるほど耐熱性や耐摩擦性などさまざまな優れた特性を持っており、建材などで広く使われていたのです。
しかし、1970年代になるとアスベストによる健康被害が分かってきました。
アスベストは非常に小さい繊維状の鉱物であり、それが呼吸器に入り込むことで肺に刺さり健康被害を引き起こすのです。
そのため、現在はアスベストの使用は禁止されています。
ただし、アスベストは1975年から段階的に使用が禁止され2006年に全面禁止となったので、2006年以前の建築物ではアスベストが含まれている可能性があるのです。
1975年以前は一般的にアスベストが使用されており、それらの建物は現在では築30~40年を超えるため現在アスベストを含む住宅を解体するケースは多くあります。
アスベストが含有された建材を使用した建物の解体は、2040年ごろがピークと言われているのです。
アスベストを含む住宅を解体する際、アスベストが飛散すると作業員や近隣住民の健康に影響が出る恐れがあります。
この健康被害を防ぐために、アスベストのレベルが定められているのです。
発じん性によって分類される
アスベストのレベルは、発じん性によって次のように分類されます。
- レベル1:発じん性が著しく高い
- レベル2:高い
- レベル3:比較的低い
解体作業する場合は、このレベルに合わせて作業する必要があるのです。
発じん性とは?
アスベストの発じん性とは、粉塵の発生率のことをいい、飛散性と同じような意味合いです。
飛散性が高ければそれだけ、解体工事での飛散リスクにつながり近隣への影響も及ぼしやすくなります。
そのため、飛散の危険性にあわせて飛散防止策を講じなければならないのです。
以下では、アスベストのレベル毎に詳しく解説していきます。
アスベストレベル1:発じん性が著しく高い
もっとも危険性の高いアスベストレベル1。
アスベストと言ってイメージする綿のようなタイプのものがこのレベル1に該当します。
綿状のアスベストは、解体時に繊維が飛び散りやすく危険です。
そのため、まずアスベストを撤去しアスベストのない状態にしてから解体作業になります。また、撤去の際にもより慎重な作業が必要になるのです。
建材の種類
レベル1の建材は「石綿含有吹付け材」となります。
これはアスベストとセメントを混合した状態の物をいい、建築物に吹き付けることで固まり綿のような状態になるのです。
石綿含有吹付け材が、アスベストの濃度が非常に高く、撤去の際には大量の粉塵が飛散します。
使用箇所例
石綿含有吹付け材が使用されているのは、主に次のような個所です。
- 耐火建築物の梁や柱
- エレベーター周り
- ビルの機械室やボイラー室の天井や壁
- 立体駐車場や体育館の天井や壁
レベル1の物は、耐火用や断熱・吸音のためとして使用されるケースが多いでしょう。
また、昭和30年代~50年初頭までの建築物では使用されている可能性が高くなります。
ただし、レベル1の物は一般的な住宅の建材としては、ほとんど利用されていないものでもあります。
作業の種類
レベル1はそのまま解体工事してしまうと、大量のアスベストが飛散する危険性があります。
そのため、まずはアスベスト撤去作業が必要になるのです。
また、解体を伴わない改修の場合では、薬液を使って飛散を防止する「封じ込め工法」や板状の材料で密閉する「囲い込み工法」を用いることもできます。
必要な対策
建築物等を解体、改造、または補修する作業を伴う建設工事においては、
アスベストが含まれているかどうか、事前調査を行う必要があります。
そのうえで、レベル1だった場合、次のような届出の必要があります。
- 工事計画届、建物解体等作業届…労働基準監督署へ提出
- 特定粉塵排出等作業届、建設リサイクル法の事前届…都道府県庁へ提出
また、撤去業ではお知らせ看板の掲示や作業場の清掃の徹底・前室の設置などで飛散防止が義務付けられています。
作業員も、粉塵マスクや保護衣の使用など厳重なばく露対策が必要になるのです。
アスベストレベル2:高い
レベル2は、配管などに巻き付けてある保温材や断熱材として利用されているのが一般的です。
レベル1よりも飛散のリスクは少ないものですが、アスベストの密度が低く軽いものが多いため、崩れてしまうと大量に飛散する恐れもあります。
ただし、吹付け材のようにこびりついていないため、配管事取り外すなどの対処もできるという特徴もあるのです。
建材の種類
石綿含有保温剤や耐火被覆材・断熱材がレベル2に該当します。
シート状の形状で配管などに巻き付けて利用されるのが一般的です。
使用箇所例
使用箇所としては、主に次のような個所があります。
- ボイラー本体や配管、空調ダクトの保温材
- 建築物の柱や梁・壁の耐火被覆材
- 屋根用折板裏断熱材
- 煙突用断熱材
作業の種類
レベル1と同様のアスベストの除去作業が必要です。
また、封じ込め工法・囲い込み工法も可能となります。
必要な対策
レベル1同様に工事前の届出が必要です。
また、周囲への注意喚起や飛散防止策・作業員の厳重なばく露対策も必要になります。
ただし、作業員が使用する保護具はレベル1に比較するとやや簡易的なものに変わります。
尚、石綿障害予防規則の改正により、令和3年4月1日からレベル2についても「工事開始の14 日前までに、所轄労働基準監督署長に計画届を提出」が必要になりました。
アスベストレベル3:比較的低い
レベル1・レベル2に比較し、取り扱いが大きく異なってくるのがレベル3です。
レベル3では、板状などの用意硬く成形された建材が該当します。
そのため、レベル1・2に比較し固く割れにくい建材のため飛散のリスクが低いという特徴があるのです。
日常で使用する分には飛散することはあまりありませんが、それでも解体時には注意が必要なことには変わりありません。
また、一般的な木造住宅でも使用されている可能性があるのが、このレベル3になるでしょう。
建材の種類
レベル3の建材は、レベル1・レベル2に該当しない建材が該当します。
成形板などの板状の建材が一般的ですが、板状でなくでも固く成形されていればレベル3に該当します。
使用箇所例
レベル3が使用されている個所としては、主に次のような個所があります。
- 建築物の屋根材や外壁材
- 建築物の天井・壁・床などの内装材
- ビニール床のタイル
作業の種類
建築物等を解体、改造、または補修する作業を伴う建設工事においては、
アスベストが含まれているかどうか、事前調査を行う必要がありますとお話ししました。
また、現在は特定条件に該当する解体作業を行う場合には調査結果の届出も必須となります。
2020年までは、都道府県庁への調査結果の届け出が義務化されていたのは
レベル1・レベル2の建材が含有されていた時のみで、
レベル3のアスベスト建材が含有されていた場合には報告の義務付けがありませんでした。
しかし、2022年4月1日からは、一定以上の規模の建築物等については、石綿含有建材の有無にかかわらず
事前調査の結果を都道府県へ報告することが法律で義務付けられていますので、
ここは大きな変更点といえます。
注意喚起の案内や作業時の湿潤化は必要ですが、
レベル1・2に比べれば前室の設置のような厳重な対策は不要、作業員のばく露対策は簡易的になります。
ただし、レベル3といってもアスベストであることには変わりなく、飛散は起こるため
慎重に作業を行わなければ健康に害を及ぼす危険性は十分にあります。
アスベストレベルごとの撤去費用の違い
解体依頼するうえでは、やはり解体費用が気になってくるものです。
アスベストが含有されている場合、通常の解体作業費用に追加してアスベスト除去費用が必要になります。
アスベスト処理面積 |
除去費用 |
300㎡以下 |
2.0万円/㎡ ~ 8.5万円/㎡ |
300㎡~1,000㎡ |
1.5万円/㎡~ 4.5万円/㎡ |
1,000㎡以上 |
1.0万円/㎡ ~ 3.0万円/㎡ |
ただし、アスベストレベルによって作業内容が大きく異なります。
そのため、費用も大きく異なってくるので注意が必要です。
とくにレベル1・レベル2とレベル3では、費用に大きな差が生まれます。
一般的には、30坪程度の住宅でレベル3では30万円程の使いになるのに対して、レベル1・レベル2では100万円単位での増額となるのです。
以下では、レベル毎に費用目安を見ていきましょう。
アスベストレベル1
レベル1での解体工事費用目安は、1.5万円~8.5万円/㎡となります。
レベル1は、もっとも危険性が高く飛散する可能性も高いため、より慎重な作業が必要になります。
また、吹付け材として使用されており天井や梁などで利用されているものが多いため、除去しなければならない面積も広い傾向があるのです。
アスベストレベル2
レベル2の解体費用目安は、1.0万円~6.0万円/㎡です。
レベル2も飛散リスクが高いため、レベル1同様に慎重な作業が必要となります。
そのため、作業費用も高額になる可能性があるのです。
アスベストレベル3
レベル3の解体費用目安は、0.3万円/㎡です。
レベル3の場合は、比較的飛散リスクが低く手作業での除去作業が中心となるため、費用も比較的安くなります。
一般的な30坪ほどの住宅で、屋根なら10万円~20万円、外壁なら20万円~30万円が費用の目安となるでしょう。
ただし、使用されている建材が多岐に渡るため場合によっては高額になる可能性もあるので注意が必要です。
アスベスト除去費用は、アスベストレベルや含有面積・含有建材によっても異なります。
とくに、解体工事中にアスベストが見つかった場合、工事が一時中断になるだけでなく除去は必ず必要になるため、高額な追加費用が発生するので注意が必要です。
事前の見積もり時に、建物内部までしっかり調査してもらうことで追加費用を防げるでしょう。
アスベスト解体の工事費用を安くする方法
解体工事費用だけでも高額になる場合があるので、アスベスト除去まで加わってしまうと依頼主の負担は大きくなるものです。
費用の不安から解体工事自体を躊躇してしまう方もいらっしゃるでしょう。
アスベストが含有されている場合でも、少しでも解体工事費を安くするためにできることはあります。
工事費用を安くする方法としては、次のことがあるので参考にしてください。
- 補助金を利用する
- 相見積もりを取る
それぞれ見ていきましょう。
補助金を利用する
アスベスト除去費用については、自治体によって補助金が設けられている場合があります。
例えば、次のような補助金があります。
・アスベスト除去等工事費用助成(東京都江戸川区)
東京都江戸川区では建築物のアスベスト除去費用の一部が助成される制度を設けています。
この制度では、除去費用の3分の2(住宅では最大30万円)・が除去費用として助成されるのです。
ただし、助成に関しては建築物石綿含有建材調査者による調査が必要になるなどの条件もあるので、事前に確認するようにしましょう。
・吹付けアスベスト除去等助成事業(京都府京都市)
京都府京都市では、アスベスト除去費用の助成として、除去費用の3分の2(上限100万円)が交付されます。
また、アスベストに対しては除去費用だけでなく調査だけでも助成金が交付される場合があります。
・吹付けアスベスト等分析調査補助金制度(大阪府東大阪市)
大阪府東大阪市では、アスベストの分析調査に対して補助金が交付されます。
この制度では、アスベストの含有の有無や含有量を調べる際の費用として、最大25万円が助成されるのです。
アスベストの調査・除去費用の助成は、自治体によって内容や条件・補助額は異なるので、事前に確認するようにしましょう。
相見積もりを取る
解体工事を依頼する場合は、1社のみに見積もりを取るのではなく、複数の解体業者に見積もりを依頼することが大切です。
とくにアスベスト除去が必要な場合、アスベスト除去工事の実績が豊富な業者を選ぶことが重要です。
不慣れな解体業者の場合、除去費用が高く見積もられてしまう可能性だけでなく、飛散防止策が不十分ということもあります。
複数の解体業者に見積もりを取ることで、アスベスト除去が得意な業者を見つけ出せるでしょう。
ただし、補助金などを利用する場合は、利用できる業者や業者のある地域などが限定されてしまう場合があるので、条件を確認した上で注意して業者を選ぶ必要があります。
まとめ
アスベストレベルの違いや解体費用の目安・費用を安くする方法をお伝えしました。
アスベストは、飛散してしまうと健康被害の恐れがあるため、慎重な作業が必要になります。
飛散レベルに応じて作業も異なり、危険性が高くなるほど費用も高くなるものです。
アスベストに関しては補助金などもあるので、上手に活用することが大切です。
アスベスト除去をご検討の方は、ぜひ本記事の内容を参考になさってください。
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