建物の解体費用の原価は?

解体工事の見積書では、『建物内装撤去費用○○円』『建物瓦撤去費用○○円』『カーポート撤去費用○○円』といった形で、施主(依頼主)にも分かりやすい項目で記載されるのが一般的です。
しかし、解体工事会社の視点で見ると、実際の建物解体費用(=原価)はどのように構成されているのでしょうか? 本記事では、解体業者の利益率や費用の内訳について詳しく解説します。
解体費用の中身を公開
○人件費
解体工事に関わる作業員、ガードマン、トラック運転手などの人件費です。地域や職種によって変動しますが、平均的な日当は1人あたり約15,000円とされています。
○重機の使用コスト(重機損料)
解体工事に使用する重機の費用です。
重機は購入後、長期間にわたり使用されますが、最終的には寿命を迎えて廃棄されます。例えば、1,000万円の重機の寿命が1,000日(稼働日数)だとすると、1日あたりの使用コストは10,000円となります。
また、【日本建設機械化協会発行 建設機械等損料表 H19版】によると、戸建ての解体工事でよく使われるバックホウ(0.5㎥)の損料は1日あたり11,000円とされています。
○運搬費用(トラック損料)
廃棄物を運搬するトラックにも損料が発生します。
同損料表によると、戸建て解体で使用される4tトラックの1日あたりの損料は6,180円です。
○ガソリン代
重機やトラックの運転には燃料費が必要です。
特にトラックは、「解体工事会社所在地 → 解体現場」「解体現場 → 中間処理場」の移動距離が長いほどガソリン代がかかるため、解体費用に影響を与えます。
○廃棄物処理費用
解体工事で発生した産業廃棄物を中間処理場で処分するための費用です。
処理費用は廃棄物の種類によって異なり、「木くず」「コンクリートガラ」「廃石膏ボード」「廃プラスチック類」「瓦」「ガラス」「繊維くず」など、分類ごとに費用が決められています。
ちなみに、「金属くず」は有価物として買取されるケースもあります。
【建物解体費用の坪単価(地域別相場)】でも紹介していますが、処理費用は地域によって大きく異なります。
○工事保険(事故リスク対策)
解体工事中の事故に備えた保険です。
例えば、「隣家を傷つけた」「通行人をケガさせた」などのトラブルに対応するため、解体業者は保険に加入します。
契約形態はさまざまですが、1つの住宅解体現場あたり約10,000円が目安となります。
○粗利(業者の利益)
解体業者の利益にあたる部分です。
複数の業者にヒアリングしたところ、粗利の相場は約20%でした。
大手ハウスメーカーでは25~30%、中小工務店で20%程度が一般的です。
○その他の費用
解体工事には、状況に応じて追加費用が発生することもあります。
- コンクリート土間の撤去:ハンドブレーカー(通称「ドドドドド」という音がする機械)を使用する場合、その損料が発生します。
- 切り回し工事:解体に伴い電気・水道・ガスの配線を変更する場合、専門職人を呼ぶため外注費がかかります
ケーススタディー:30坪の木造住宅を解体した場合
これまでご紹介した知識をもとに、30坪の木造住宅を解体した場合の費用を試算してみましょう。
仮に、
- 解体期間:6日間
- 作業員:平均3人
で進めるとします。
費用の内訳
1. 人件費
15,000円 × 4人 × 6日 = 360,000円
2. 重機損料(使用4日間)
11,000円 × 4日 = 44,000円
3. トラック損料(使用6日間)
6,180円 × 6日 = 37,080円
4. ガソリン代(重機は1日8,000円、トラックは1日1,500円)
(8,000円 × 4日) + (1,500円 × 6日) = 41,000円
5.廃棄物処理費用(種類別の処理費用)
木くず:41.22㎥×5,000円=206,100円
がれき:17.7㎥×4,500円=79,650円
混合廃棄物:9.69㎥×7,000円=67,830円
石膏ボード:3.06㎥×7,000円=21,420円
廃プラ類:2.64㎥×7,000円=18,480円
金属くず:引取りとする
ガラス:0.3㎥×7,000円=2,100円
建具、畳:0.13㎥×6,500円=25,350円
クロス:0.15㎥×7,000円=1,050円
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小計:450,330円
6. 工事保険
10,000円
7. その他(道路側溝の保護用鉄板)
30,000円
総費用の計算
これを全て合計すると、【解体費用の原価972,410円】
仮に粗利が20%だとすると、972,410円 ÷ 0.8 ≒ 1,215,000円
ということで皆さんのお手元に届く見積りが、
【解体費用:1,215,000円】
となるわけです。
いかがでしたでしょうか?
解体費用の内訳が明確になると、見積もりの見方も少し変わってきますね。
「どんなコストがかかっているのか?」を知ることで、納得感を持って見積もりを受け取れると思います。ぜひ、今後の解体工事の参考にしてみてください!
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