建物解体の法律:廃棄物処理法(廃掃法)
廃棄物処理法とは
廃材を処理する過程において、もっとも重要かつ基礎となっている法律が『廃棄物処理法』です。
廃棄物処理法や廃艘法というのは通称で、正式名称は『廃棄物の処理及び清掃に関する法律』といいます。(長いですね^^;)
この法律は高度経済成長の末期、日本が公害問題にゆれている昭和45年に制定されました。元々は『清掃法』という『家庭ごみ』や『汚泥』の処理方法を示した法律が基礎となっているのですが、時代の流れと共に改変が進み、現在は不法投棄を取り締まる役目が強くなってきています。
廃棄物処理法のポイントは3つです。
廃棄物処理法
ポイント1:廃棄物は適正に処理をしなくてはならない
廃棄物処理法では、廃棄物の処理することについて次のように規定しています。
廃棄物処理法より抜粋
第十一条 事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。
第十二条 事業者は、自らその産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。第五項から第七項までを除き、以下この条において同じ。)の運搬又は処分を行う場合には、政令で定める産業廃棄物の収集、運搬及び処分に関する基準(当該基準において海洋を投入処分の場所とすることができる産業廃棄物を定めた場合における当該産業廃棄物にあつては、その投入の場所及び方法が海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律 に基づき定められた場合におけるその投入の場所及び方法に関する基準を除く。以下「産業廃棄物処理基準」という。)に従わなければならない。
2 事業者は、その産業廃棄物が運搬されるまでの間、環境省令で定める技術上の基準(以下「産業廃棄物保管基準」という。)に従い、生活環境の保全上支障のないようにこれを保管しなければならない。
事業者というのは、産業廃棄物を発生させる原因を作った事業を営むものを指します。建物の解体の場合は、『解体工事』という事業を通じて木くずやコンクリートといった産業廃棄物が発生するわけですから、解体工事会社が事業者ということになります。(施主ではありません)
環境に大きな影響を及ぼす可能性のある廃棄物ですから、発生の原因をつくった事業者(解体工事会社)が責任を持って処理をする必要があるということですね。
ポイント2:収集運搬・中間処理・最終処分の委託先は許可業者のみとする
先ほど、「廃棄物は事業者自ら、責任を持って処理をしなければならない」とお話しましたが、収集運搬車、中間処理場、最終処分場の全てを持っているということは非常に稀です。
そこで、『適正な対応が出来ることのお墨付き(行政の許可)』を取っている収集運搬業者・中間処理業者・最終処分業者であれば委託をすることが出来る、とされています。(=許可がない業者には委託できない)
5 事業者(中間処理業者(発生から最終処分(埋立処分、海洋投入処分(海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律 に基づき定められた海洋への投入の場所及び方法に関する基準に従つて行う処分をいう。)又は再生をいう。以下同じ。)が終了するまでの一連の処理の行程の中途において産業廃棄物を処分する者をいう。以下同じ。)を含む。次項及び第七項並びに次条第五項から第七項までにおいて同じ。)は、その産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除くものとし、中間処理産業廃棄物(発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程の中途において産業廃棄物を処分した後の産業廃棄物をいう。以下同じ。)を含む。次項及び第七項において同じ。)の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第十四条第十二項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。
6 事業者は、前項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。
更に、ただ許可のある業者に任せればよいというのではなく、任せた後も適正に処理が行われているかを確認する義務が定められています。
7 事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
処理後の確認義務を解体工事会社に課すことによって、適正な処理が行われるような仕組みを築いているのですね。
ポイント3:排出業者(解体工事会社)はマニフェストを発行する義務がある
廃棄物処理法では、廃棄物が適正に処理される過程を確認・保存する方法として、排出事業者(解体工事会社)に対して産業廃棄物管理票(通称:マニフェスト伝票)の発行を義務付けています。
(産業廃棄物管理票)
第十二条の三 その事業活動に伴い産業廃棄物を生ずる事業者(中間処理業者を含む。)は、その産業廃棄物(中間処理産業廃棄物を含む。第十二条の五第一項において同じ。)の運搬又は処分を他人に委託する場合(環境省令で定める場合を除く。)には、環境省令で定めるところにより、当該委託に係る産業廃棄物の引渡しと同時に当該産業廃棄物の運搬を受託した者(当該委託が産業廃棄物の処分のみに係るものである場合にあつては、その処分を受託した者)に対し、当該委託に係る産業廃棄物の種類及び数量、運搬又は処分を受託した者の氏名又は名称その他環境省令で定める事項を記載した産業廃棄物管理票(以下単に「管理票」という。)を交付しなければならない。
更に、マニフェストを5年間保存する義務を設けることによって、行政が立入検査をした際に過去の廃棄物の処理経路を確認できるようにしています。
2 前項の規定により管理票を交付した者(以下「管理票交付者」という。)は、当該管理票の写しを当該交付をした日から環境省令で定める期間保存しなければならない。
このように廃棄物処理の管理をシステマチックに行うことで、不法投棄の抑制に努めています。
違反した場合に厳しい罰則
このような決まりを定めている廃棄物処理法ですが、違反した場合には非常に重い罰則が定められています。
第二十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第七条第一項若しくは第六項、第十四条第一項若しくは第六項又は第十四条の四第一項若しくは第六項の規定に違反して、一般廃棄物又は産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を業として行つた者
二 不正の手段により第七条第一項若しくは第六項、第十四条第一項若しくは第六項又は第十四条の四第一項若しくは第六項の許可(第七条第二項若しくは第七項、第十四条第二項若しくは第七項又は第十四条の四第二項若しくは第七項の許可の更新を含む。)を受けた者
三 第七条の二第一項、第十四条の二第一項又は第十四条の五第一項の規定に違反して、一般廃棄物又は産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分の事業を行つた者
不法投棄の摘発で悪徳業者が裁かれているのは、この規定によるものです。
建築基準法の罰則でさえ最高で『三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金』ですから、いかに廃棄物処理法の『五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金』が重いかはご理解いただけると思います。
この罰則は収集運搬業者と処分業者に課せられたものですので施主が罰せられることはありませんが、不法投棄に手を貸してしまうというのは心が痛みますし、悪徳業者に関わるリスク(近隣トラブル、工事放棄、暴力団etc.)は計り知れませんので、ぜひ業者選びは慎重に行いたいものですね。
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